美味し〜たこ焼きを体に許せし者。それが、私。
《グルメ系レビューに手を出します》
暑い。
いや正確には昼間は、暑い。
しかし夕方になると日も落ちてきて時折吹く風が涼しいを通り越して寒気さえ覚える気候になってきた。
今は5時半。夕方には少し早いかもしれないが空は十分に暗くなり始め上着が無いと外に身を放り出すのは厳しい気温になってきた。
寂れたビルディングの窓からチラチラと漏れる光が街道を照らす。かつては立派な都市ではあったが今や都会というにはあまりにも時代に置いてゆかれたーーまた田舎というには発展が過ぎたーー中途半端な街。
夜と昼間の間。街灯も光を宿し、帰宅する人々で少し、賑わいが出てくる。
そんな街にただぽつりぽつりとあるく男が一人。
それが私、じぇらである。
私は大通りが示す大衆の流れから道を外れ、お目当てのあの店にゆく。
今日私は、たこ焼きを食べに来た。
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「すいませ〜ん、やってます?」
オープンの文字を確認しながらも扉を開けて中のオヤジに声をかける。私は心配症なのだ。
「PayPay使えます?」
もちろん私はPayPayが使えることも確認済みである。
『おう、使えるけど今から焼くけどいいか?』
ここの店のオヤジは声が低く強面で、無愛想にみえる。がしかし、急な来店にも嫌な顔ひとつもせず、チャカチャカと準備を始めるその態度から、無口だがきっと心優しい人なんだろう。あくまで想像だが。
そしてもちろん、腕が確かなことを知っているからここの店に来たのである。
8個入りで500円。高いか安いかは知らないが、うまけりゃなんでもいい。500円分以上の幸せがあるから足を運んだのだ。
ところで、たこ焼きに最も合う飲み物といえば何を思い浮かべるだろうか。私は真っ先にコーラを思い浮かべた。本当はハイボールをコーラで割ったコークハイが一番だと聞いたから、それが良かったがまだ年齢がそれを許さない。しかしコーラで物足りないかというと、そうでもない。
実は私はここに来るまえにミニストップへ寄って、コカコーラを買っていた。それも、缶で。
まぁ、正直言えばペットボトルで売っていなかっただけなのだが。缶の方が雰囲気あるし、クビっと喉に流し込む感覚がより鮮明に想像できたので即刻で納得して購入した。
実際のところ、私はコーラとたこ焼きの組み合わせは試した記憶が無いため、どのくらい合うのかは未知数である。果たして合うのだろうか。期待外れだったらどうしようか。
そんなことを考えながらカウンター席にどっしりと腰をかける。
古い型のテレビから天気のニュースが流れ出る店内。
〔ジュ〜〜………〕
たこ焼きの焼ける音がする。
ごくり。
私の缶が待ち侘びている。
ちゃんとした量を昼に食べたのだが育ち盛りなもので、夕方になると小腹が空いてしまう。いや、小腹じゃすまないほどにお腹空いている。
また太ってしまうな、とも思ったが今そんなことを考えるのは無粋だろう。
早くたこ焼きを食べたい。
熱々のたこ焼きを冷え冷えのコーラで幸せを流し込みたい。
まだか。
まだか、オヤジよ。
私にうまうまのたこ焼きをくれ!!
〔ジュ〜〜〜…〕
『はい、おまち』
絶対うまいだろ!!
おっと失礼。ついテンションが上がってしまう。
このコーラとたこ焼きの並ぶ姿。これは合うに決まってる。絶対的な幸せがくることを舌が予測したかのように涎が止まらない。食欲がMAXになっていくのを感じるが、早く食べたい焦りを抑えつつゆっくりソースとマヨネーズをかける。
さぁ!!実食の時間だ!!
ざしっ。
がっ。
ぐびびっ。
くぅ〜!!!ぅま❗️!
これは、ヤバい。
確実にヤバい。うますぎる。なんだこれは。全てが完璧すぎる。たこ焼き特有のとろっとろの旨さが飛び込んできたと思ったら、タコのぷりっぷりなこと!(想像の2.5倍ぷりっぷり)
噛むたびにコリっ、じゅわっ。口の隅々までたこ焼きが広がっていく。ソースとマヨネーズの激うまコンビとのハーモニーと言ってはありきたりだが、こればかりは調和という言葉を使わざるを得ないほどにうめぇ。
そして鼻にかけて鰹節の香りがフワッと全体を包み込む和の香り。これを食いにきたのだ。今日の一番の正解はこのたこ焼きを食べたことであろう。そう確信した。
そして飲み込むと同時にコーラが、シュワワッッ〜〜!!!と良〜い音を奏でながら喉を通っていく。炭酸に涙目になりながらも、ゴクリゴクリと、これでもかとばかりに缶を傾ける。ぷはっ。爽快感と余韻とで少しの間動けなくなる。きっと間抜けな顔をしているだろう。だが幸せで溢れた顔でもあることは確かだ。
さぁ、あと7つもたこ焼きは残っている。
パクパクしますか!!
この店では自分で好きなようにソースとマヨをかけれてるのだ。だからソースの海にたこ焼きをディップするという荒技も可能だ。
そしてソースはなぜかキンキンに冷えているが、猫舌の私には助かる上に、熱々とキンキンの境目のギャップが訳がわからないぐらいうまいから最高なのだ😋
ポン酢もあるよ!!
じゃばじゃばに浸して食べちゃう。
うっめ。
あと半分!!
もちろんコーラもグビってま〜す!✌️✌️
最後の一個だぁ〜!
幸せをありがとよ。
幸せはこれで終わってしまう?いやそんなことない。終わりがあるから幸せは幸せであるのだ。
だから終わりを怖がらない。そう、私は過去の私ではないのだ。おっと、話がまた難しい方へ行ってしまった。今日は難しいのは無し!!!
ごくーーーー!!!
完⭐️食!V
あ〜〜〜〜最高の食事だったぁ〜〜。
まだうまい。まだ「うまい」が口の中に残っている。
お腹に溜まった満腹感と、食ってやったぞと言わんばかりの満足感で、心がゆるむ。あぁ。幸せだ。
何もかも忘れられるようなこの幸せの余韻を肴に、残ったコーラをごくごくと。
ふぅ。
あぁ。もう。頭空っぽ。絶対なんかやばいホルモンでてる。脳内麻薬どばーーーです。
はい。
さてと。
「ご馳走様でした〜!お勘定お願いします」
『あいよー』
「まじ美味しかったです。まえ来たんですけどめちゃ美味かったんで!」
『おぉありがとう。』
「また来ます!」
無愛想だとはいったが美味しいと言っただけで笑顔でお礼を言ってくれる。やっぱり良い人だ。お礼を言いたいのはこっちなのに。
また来よう。
改めてそうきめた。
街を歩く。
…高校時代は友達とよく飯を食っていたが、もう一人でご飯を食べるのにも随分慣れてしまった。
むしろ一人の方が気楽で良い…かもしれない。人と食べる喜びも分かってはいるが、どちらが良いかは、全く分からない。
浪人して感覚がおかしくなってから今の自分が何をしたら幸せかがもうわからない。同じことをしてもその日の心具合によっては楽しめるかはわからなく、それが私は怖い。そんな日によって気分が変わるような自分は、あまり好きではない。ただ、本当にどうしようもないのだ。前に比べればかなり安定はしてきたが、健全とは言い難い。
ただ、今日の幸せは確かにそこにあった。幸せと思いたいことをちゃんと幸せと感じられることがとてもありがたい。
また、難しい話をしてしまった。
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あたらしく友達もできた。思った以上に周りから応援されてることも知った。勉強も頑張っている。
安眠できる夜も増えた。
はぁ。
これから人生どうなっていくのか。想像がつかないからものすごく不安だ。この位置からじゃ見えないものが多すぎて心が未来を信じてくれない。
なんという始末だ。だが、それで良いんだろう。辛い時不安な時孤独な時こそ磨けるものがある。
この「不器用な私」で、自分を生きていくしかない。人は皆そうだ。
今はもうぐちゃぐちゃになった心とドロドロになってしまった人間関係。また再び仲良くできる日が来るのであろうか。今は全く不明瞭だ。
しかし、これからも人生の波にひっくり返され、くるくると翻弄されつつも、この再び宿った覚悟と熱で逃げることなく立ち向かっていきたいと思う。
それはやがてあるカタチをつくり、例え不恰好であっても自分らしく固まっていくのだろう。
まだまだ未熟な19歳。
強火で行け。まだまだソースもトッピングも自分次第である。
人生は、たこ焼きのような、ものかもしれない。